ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「ならいいけど」
閑は見た目が王子様なくせして、仕事がらさまさざまな立場の人とやりとりをするせいか、その内面はしたたかで、強い。
俺様な面があるため、誤解されがちではあるが、人となりはまっすぐの瑞樹と、見た目や振る舞いは完璧な優等生のくせに、その心は複雑怪奇で面倒くさい蒼佑の間で、うまくやれるのはこの男くらいだろう。
「なにかあったら、相談して。友人としてでもいいし、法律のプロとしてでもいいし」
「ありがとう。恩に着る」
蒼佑は唇に上品に微笑みを浮かべて、うなずいた。
それから三人の会は、まもなくしてお開きとなった。
蒼佑は個室からカウンターへと移動して、ひとりでウイスキーの入ったグラスを傾けていた。
(押したら引く……か。そんな計算ができるくらいなら、こんな苦労はしていない)
――蒼佑は、自分が面倒な男だということを重々理解している。
誰の目にも人格者のように映るのは、自分が誰にも好かれようと思っていないからだ。
博愛主義者のようで、誰よりも冷めている。それが天野蒼佑の本質だった。