ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 蒼佑の家庭は、基本的には仲のいい家族だった。父は母を大事にし、母は天真爛漫さゆえのわがままな部分はあったが、それでもよく父に仕えていた。蒼佑自身、両親に跡取りとして大事に育てられ、何不自由ない生活を送った。だがどれだけ恵まれた環境にいても、蒼佑は満たされなかった。

 自分を大事にしてくれる家族、友人。それに、蒼佑のことを好きだと言ってくれるきれいで心優しい女の子たち。彼らから与えられる恩恵を、当たり前のように受けながら、どこかつまらないと思っていた。

(俺、おかしいのかも)

 中学生になるころには、そう自覚していたし、だからこそ逆に、自分を慕ってくる人たちの心をざわめかせないよう、優等生ぶることが出来るくらい、蒼佑は大人びた子供だった。

 途中、瑞樹や、閑という一癖ある友人と出会い、多少楽しい時期もあったと言えばあったのだが、蒼佑の心をしっかりと繋ぎとめることが出来る女性は、ずっと、ひとりも現れなかった。

 かといって、天野家の御曹司として品位を落とすような派手な遊びをするわけもなく、ただ周囲と余計な軋轢を生まないように、その時一番正解と思われる女性を選び、付き合うだけ。
 そして求められるがまま体を重ねていくうちに、蒼佑は自分の中に、多少女性に対して、潔癖なところがあると気がついてしまった。


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