ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
好きだとも思わない女性に好かれれば好かれるほど、どうしてこの人は自分を愛してもいない俺を、好きだというのだろうと、冷めていくのだった。
触れられるのも嫌になり、別れを告げるのはいつも自分だった。
だがいくら泣かれても、心は揺らがなかった。
蒼佑と付き合いたい女の子は、それこそ星の数ほどいて、肉体的な欲望を解消するには、困らなかったからだ。
結局それは、若さからくる傲慢さだけではなかったのだろう。
自分は冷たい人間なのだ。
そして蒼佑はそんな自分を変えようとは、まったく思わなかった。
そんなある日――。
蒼佑が二十歳になるころ、運命の出会いがあった。
政治家で大臣経験もある、国会議員の椎名要蔵(しいなようぞう)と、知り合いのピアニストのコンサートで初めて言葉を交わしたのだ。
椎名要蔵といえば、元検察官で泣く子も黙るカミソリ要蔵と噂される、一部界隈で、恐れられている男だった。