ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 もちろん蒼佑も例外ではない。要蔵のようなある種の審美眼を持った人間に、自分の人としての底の浅さが露呈するのは、少し恐ろしいと感じるくらいの若さがあった。

 だが彼は、恐る恐る挨拶をする蒼佑を気に入ってくれた。そして同時に蒼佑も、彼を面白い人だと感じた。

 生意気かもしれないが、当時の蒼佑は、なぜかこの人とは馬があうと思ったのだ。気が付けばふたりで酒をくみかわすような仲になっていた。年の差を楽しめる、友人同士になっていたのだった。

 きっかけはおそらく些細なことだった。
 彼のお気に入りのシガーバーでお酒を飲んでいた時に、自分はどこか冷たいところがあって、基本的に、他人と関係を築きたいと思わない、という話をしたのだ。

 それを聞いて、要蔵は少し楽しそうに笑ったはずだ。

「たぶん君は、恵まれすぎているね」
「そうでしょうか」
「たまには思い通りにならない状況を楽しんでみたらいい。うちの孫娘なんか、相当手ごわいと思うがね」

 そして家庭教師をしてみないかと紹介されたのが、彼の孫娘である葵だった。

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