ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 葵はまっさらの新雪のような少女だった。

 蒼佑を見て、隠すことなく驚いたように目を丸くして、それから顔を赤く染めて、うつむいた。

 そんな葵を見て、蒼佑はかわいいなと思ったが、この子がどうして自分の思い通りにならないだろうと、思ったのも事実だ。
 なにしろ蒼佑ときたら、生まれてこの方、女性に苦労したこともなく、嘘偽り、誇張なく、愛されるだけの人生を送ってきたのだから。葵にも当然、好かれるものだと思っていた。

 だが現実は違った。

 家庭教師を始めて一年間、葵は勉強の場所として、リビングを選んだ。彼女の部屋に招いてもらうどころか、一度もふたりきりにさせてもらえなかった。

 こちらから話しかければ、なんでも答えてくれるが、基本的には真面目に勉強をする気でいるらしく、蒼佑のプライベートにはいっさい踏み込んでこなかった。

(もしかしてこの子は俺に興味がないのだろうか?)

 そんなことを考える自分に驚いたし、これでは要蔵の思うつぼではないかと、少し悔しくなった。

< 154 / 318 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop