ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 だが相手は、五つも年下の女の子だ。ふりまわされるのは、ごめんだと、自分に言い聞かせていた、ある冬の日のこと――。

 その日は応接間で勉強していて、パチパチと暖炉の炎が音を立てていた。

 テストの結果が返ってきて、成績がかなり上がった。
 葵の家族は大喜びで、葵も喜んでいた。なので、珍しく葵から話しかけてくれたのだ。

「先生、私、勉強がようやく好きになりそうです。先生、ありがとう……よかったらこれからも、勉強教えてくださいね。私、がんばります」

 その瞬間、彼女から与えられるまっすぐな信頼と感謝の気持ちに、蒼佑は心を打たれて、泣きたいくらいの、感動を覚えた。

【あなたならできるでしょ】
【完璧だもんな】

 そう言われて今まで生きてきた蒼佑にとって、信頼も感謝も、軽いものだった。

 だが葵の言葉は違った。

 彼女の言葉には、重みがあった。
 本当に彼女は自分に感謝しているのだと気が付いて、そしてなおかつ蒼佑に報いようと、努力しようとしているのだ。

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