ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
なにも知らない葵に対して、後から後から押し寄せてくる欲情に、蒼佑はめまいを覚えた。
自分の中に、こんな獣のような感情があると知らなかった蒼佑は、ある意味恐怖を感じた。しかも動揺したまま要蔵にそのことをペラペラと話してしまい、大笑いされたのは、言うまでもない。
「だから言ったろう。世の中には、君の思い通りにならない女もいるんだ。葵はね、本人には自覚がないが、相当慎重なたちだから。石橋を叩いても渡らない女なんだよ。君相手だと、絶対に自分からは一線を超えることはないだろうね」
その時は、要蔵の言いたいことはあまりよくわからなかった。
一線を超えたいのは自分であって、葵がそんなことをしてくれるはずがない。
だが、好きになってしまったからには、どうにかなりたい。そればかり考えて過ごすようになった。
(どうしたらいいんだ?)
蒼佑は真剣に、戸惑った。
葵には嫌われてはいない。そのことはわかっている。だが男としてはどうだ。
まったく自信がない。
そもそも、好かれ続けるだけの人生だったから、どう彼女を好いていいのかわからない。