ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 そしてエレベーター事故をきっかけに、過去の自分の後悔を素直に告げて、葵の態度が軟化したことが、蒼佑は死ぬほど嬉しかった。

 ただそれだけで、蒼佑は天にも昇る気持ちになったのは事実だ。

(だからこれからは、少し考えて行動しないとな……)

 彼女の家の台所でキスをしたとき、 葵の反応の良さに煽られて、完全に理性を失っていた。
 蒼佑は本気で、このまま葵を抱いてしまおうかと考えたのだ。

 台所だろうがなんだろうが、知ったことではない。

 ただ自分の腕の中にいる女が、欲しくてほしくて、たまらなかった。

 一度抱いてしまえば、二度もそれ以上もない。

 既成事実を作れば、葵は自分のものになるしかなくなるのではないか。
 あるいは、子供が出来たらもしかして――。

 蒼佑はあの一瞬で、そんな身勝手なことばかり考えてしまった。

 ナツメが帰ってこなかったらどうなっていたか――。
 考えると、少し恐ろしくなる。

 獣のような自分の本心は、できるだけ出したくない。
 
 それもなにもかも、葵に嫌われたくない、一心だった。

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