ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
それは俺の役目だから。

 というわけで、迎えた日曜日。葵はたった一人で、横浜の地に立っていた。

 時間は午前十時。天気は快晴、絶好の行楽日和かもしれないが、葵は妙に緊張していた。

(ティーン向け雑誌のイベントで、ファッションショーって、言ってなかった!?)

 そう、ナツメは確かにそう言ったはずだが、日曜日のみなとみらい駅は、手にうちわを持ったり、精いっぱいおしゃれを楽しんでいる十代の女の子たちで溢れかえっていた。まるでアイドルのコンサートだ。
 徒歩五分の会場まで歩いているうちに、葵はなんだかいたたまれない気分になる。

(私、場違いだよね……)

 当然と言えば当然だが、ティーン雑誌のイベントなのだから、メインターゲットはナツメと同世代ということになる。

 だが、今さらやっぱりやめるとは言えない。
 ナツメの晴れ舞台なのだから、ちゃんと目に焼き付けなければならない。

(なっちゃんのところだけ見たら帰ろう……)

 そう決意しつつ、すでに開場している入り口で、招待券を渡し中に入る。

 会場内には、人気のアイドルやJPOPなどの曲が、大音量でかかっていて、ワクワクした顔の女の子たちが、「どこまわる~?」とマップを広げ、顔を寄せ合っていた。

< 161 / 318 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop