ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
着いたら電話するように言われていたので、スマホを取り出すと、ナツメからの着信が残っていた。
時間は十分ほど前だ。ちょうど駅に着く前だったので、着信に気が付かなかったらしい。
「時間通りに来たのに……心配性なんだから」
もしかしたら、臆して中に入って来れないと思われたのかもしれない。
葵はクスッと笑って、折り返し発信する。
コール音がなるやいなや通話がつながり、ナツメから開口一番に、【今どこ?】と尋ねられた。
「えっとね……出入り口にアルファベットCって書かれてるところ」
葵はそう答えながら、周囲を見回した。
今回のイベントには、三千人が招待されていると葵から聞いている。会場内は、色とりどりのバルーンが飾られていて、中央にはランウェイがあり、左右の壁沿いには、洋服や雑貨のショップがずらりと並んでいる。
当然、あたりはどこを見ても若い女の子ばかりだ。
【わかった。うっちーに行ってもらう。そこ、動かないで】
「え?」
なぜかナツメの声が、強張っているように聞こえた。