ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 大内はなんだか悲しそうに笑いながら、息を整える。

「ところで、大内さん、どうしたんですか?」

 着いたら電話というのはまだしも、大内が自分に会いに来る意味が分からない。

「ここではなんですので。どうぞこちらに……ふう……」

 大内は、胸元から大きな手のひらサイズのステッカーを取り出すと、葵に差し出す。

「これは葵さんのためのゲストパスです。これを身体の正面の見えるところに貼ってもらえますか?」

 ステッカーには今日の日付と、NATSUというナツメの名前がマジックで記入されていた。ナツメの関係者という証明なのだろう。

「はい」

 言われるがまま、裏紙をはがして、着ているブラウスの胸の下あたりにぺたりと貼る。そして大内の先導でいったん会場を出て、警備員が立っているゲートを抜けた。

 長い通路の左右にはドアがずらりと並んでいる。おそらくここは、出演者の控室なのだろう。

 そこでようやく大内は、肩から力を抜いて、ふうっと息を吐くと、隣を歩く葵に、顔を寄せて囁いた。

「すみません。実は、ナツメあてに脅迫状が届いて……」

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