ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
そういうナツメの目は、真摯な熱意に満ちていて。それを見て葵はもう、何も言えなくなってしまった。
(なっちゃんだって、自分の意志でこの仕事をしているわけで……子供だと思っていたけど、そうじゃない部分があって……)
陸上を怪我で辞めざるを得なくなり、失意の中で選んだ仕事がこれだ。これはナツメの生き方なのだ。
「――わかった。でも、気を付けるんだよ。異変を感じたら周りの大人に声を掛けて……隠し事は絶対にしないでね」
「うん。ありがとう」
ナツメはホッとしたように肩から力を抜いて、
「悪いけどここで俺の活躍、見ててね」
と、パチンとウインクをした。
結局――葵は会場に行くことなく、楽屋で大内が撮る動画をタブレットで見ることになった。
「わ……かっこいい……」
華やかなステージに流れる洋楽と、派手な照明。そこで大きなヴィジョンにナツメの顔が大きく映ると、会場内で割れるような歓声と、悲鳴が上がった。