ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 ただまっすぐ歩くだけなのに、キラキラと光って見える。

 ナツメのファンらしい、うちわを持った女の子たちが飛び跳ねている。
 そんな女の子たちを目ざとく見つけて、ナツメがにっこり笑って指をさすと、女の子たちは感極まったように泣き出してしまった。

(なっちゃん、すごいんだな……)

 もちろん、最近人気が出てきたというのは、仕事が増えていることから感じ取ってはいたが、自分がSNSをやっていないためか、ナツメの人気ぶりなど基本的に蚊帳の外の出来事だった。

(応援しなきゃな……)

 今まで、ナツメのやりたいことをしたらいいという気持ちくらいしかなかったが、これからはもう少し、違った形でサポートできたらいいと思う、葵だった。


―――――


 とりあえずイベントは滞りなく終わったようだ。
 タブレットの中のナツメは、ステージの上で、ほかのモデルやアイドル、俳優陣と肩を組んで並び、会場に来ている観客に深々と頭を下げていた。

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