ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

「よかった……」

 ホッと胸を撫でおろして、壁にかかっている時計を確認する。
 時間はお昼の一時だ。ナツメが出るショーが始まって、なんと二時間近くたっていたが、あっという間だった。

(これから帰れるのかな……いや、ショーのあとは挨拶とか、打ち上げとかあるのかな。だったら私だけ、帰ろうかな)

 一緒にいたらナツメも帰ると言うかもしれない。仕事を応援すると言った以上、邪魔にはなりたくない。

 葵はタブレットを置いてすっくと立ちあがった。

 楽屋の鍵は置いていっている。ちゃんと鍵をかけて、事務局に渡しておけばいいだろう。
 そしてそのまま楽屋を出て、スタッフの姿を探すことにした。

 たまたま通りがかった若いスタッフの男性に事務局の場所を聞いて、鍵を返しに向かった。そこでスタッフに姉だと名乗り、挨拶をかわし、問題なく鍵を返して事務局を出る。

「一応、メッセージ送っておこう……かっこよかったよ、先に帰るね……鍵は事務局本部に返しておきました……っと」

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