ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 葵はスマホからナツメにメッセージを送る。そしてスタスタと出口へと向かった。

 会場を出て、緩く長い階段を、かろやかに降りる。
 そう、気が付けば、足取りは弾んでいた。きっと華やかなショーを見て、気分が揚がっているのだろう。
 なんとなく頬も緩む。鼻歌でも歌いたい気分だった。

「帰りにお買い物にでも行こうかな……」

 最近、休みの日は、家にこもってばかりだった。
 だがたまには外の空気を吸って、美味しいケーキでも買って帰ろうか。

 ここまで出てきたのだからと、葵は立ち止まり、スマホを取り出して、有名なケーキ店などが近くないか、調べようとしたのだが――。

 その瞬間、ドンッと、背中に衝撃が走る。
 わざと体当たりされたと気が付いたのは、ぶつかってきた人間が、

「邪魔なんだよっ……」

 と、低い声で囁いたからで。

「え……?」

 と思った瞬間、葵の体はゴロゴロと階段を転がり落ちていく。周囲から「きゃーっ!」と悲鳴が上がったような気がしたが、視界はブラックアウトする。葵はそのまま気を失ってしまったのだった――。

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