ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
次に目を覚ました時――。
葵は薄暗闇の中にいた。
けれど頭上、視界の右から左に、一筋の光が入っていて、天井の模様が見える。
自分の部屋でもない、どこか知らない天井だ。
部屋の中に差し込んでいる光は朝日だろうか。それとも夕日なのか。
それを確かめようとして、顔を右手に動かそうとしたら、全身に、ピキッとひびが入るような痛みが走った。
「い……っ……」
悲鳴が漏れそうになり、つい唇をかみしめる。
まったく想像してなかった痛みに、葵はぎゅっと目を閉じる。
なぜ、体が痛いのだろう。突然の体の不自由に、思考が混乱する。
なんとか腕を持ち上げると、点滴の針が手の甲に刺さっていて、なおかつ、腕に包帯が巻かれているのが見えた。
(私……)
自分の状態を見て、だんだん思考が落ち着いてくる。
「――葵?」
そこで葵が動いたことに気が付いたらしい。足元のほうから声がして。足音と衣擦れの音がした。