ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 蒼佑は葵の返答を聞いて、怒ることもせずホッとしたように笑って。それからくしゃりと、顔をゆがめて、両手で顔を覆った。

「よかった……目が覚めた。いや、じきに覚めると言われてたけど、万が一があったらどうしようと……」

 もしかして泣いているのだろうか。ふざけて、忘れたと言わなくてよかったが、反省する。そしてまさか、こんな大きな男が泣くはずがないと思いながらも、そのくらい心配をかけたということはまぎれもない事実だろう。

「ごめんなさい……」

 葵は思わず、謝っていた。

「なぜ謝る。君はなにも悪くない」

 蒼佑はそう言って、ぐっと息を飲み、優しく安心させるように微笑んだ。

「――ここは?」
「俺の知り合いの病院だ。だから安心していい」
「病院……」

 そしてようやく、自分がなぜここにいるのか、思いだしたのだった。

「私……階段から落ちて……」

 邪魔と言われて、体当たりをされたことは覚えている。
 低い声だったが、たぶん女性だったはずだ。
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