ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
そして蒼佑はまたひょいっと葵を抱き上げて、スタスタと歩き始める。
「ちょっ……」
「砂利に足を取られたら危ないから」
蒼佑は真面目ぶっているが、その表情はどこか笑っているように見える。
(絶対わざとだ……)
葵はそう思わずにはいられなかった。
「病院に来る前に、風を通していたから、大丈夫だとは思うけど」
長い縁側を渡り、古風な造りのガラス戸を開けると、そこはフローリングになっており、年季の入り方に雰囲気のある革張りのソファーや、ガラスのテーブル、薬箪笥が美しく配置されていた。
「素敵な部屋ね……」
「庭が一番よく見える部屋がここなんだ。だからいつもここで本を読んだり、酒を飲んだり、ゴロゴロして過ごしていたよ」
蒼佑は葵をソファーに座らせた後、縁側の戸もすべて開けていく。
「あ……風が気持ちいい」
開け放った瞬間、広い庭からさわやかな風が通り抜けて、葵はホッとして、息を吐いた。確かにマンションよりも、こんなふうに緑が見える部屋にいたほうが、リラックスできそうだ。