ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「ねぇ……私の事、ご両親に話してる?」
その瞬間、蒼佑の表情が明らかに曇った。ほんの数秒、黙って。はっきりと口にした。
「――話してない」
「そうよね……」
別にそのことで、蒼佑をどうこう言うつもりはない。
実際自分は、蒼佑になんの返事もしていないのだから。
「でも俺は――」
「話さなくていいわ」
「葵……!」
なにか誤解をしていると思ったのかもしれない。蒼佑が慌てて口を開こうとしたが。
「ううん。皮肉で言っているんじゃないの」
葵は首を振った。
「確かに私は、八年前に門前払いをされたけれど、それは元々おじいさまからの申し出だったわけだし……ご両親があなたの将来を一番に考えるのも、当たり前。べつに根に持ってなんかいない」
その言葉に嘘はなにひとつなかった。
「さ、おそばを食べましょう。すっごく美味しいのに、のびちゃう」
葵は笑って、また箸を手に取る。
蒼佑がなにか言いたげなのはわかっていたが、それには気が付かないふりをした。
そして自分の心に、確かに芽生え始めている気持ちににも――。