ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「蒼佑は昔からまじめな子で……きっとあなたに対して、罪悪感を抱いていたのだと思うわ。だから、あなたの気持ちを強く拒むことが、できなかったんだと思うの……」
りか子は息継ぎをするように、ふうっとため息をついて、そして頬に落ちる髪を、耳に掛ける。
「それに、あなただって、今さら本気で、蒼佑の妻になれると思ったわけじゃないでしょう? ただ、昔の疑似恋愛を懐かしんで、楽しんでいた、だけでしょう? だったら、このあたりで遊びは終わりにして欲しいの」
そしてりか子はじいっと葵の目を見詰めた。
わかってくれるわね、と顔に書いていある気がした。
だが葵は――りか子の一方的な空想話を聞いて、少し呆れていた。
(全部、私のせいにしたいのね……だから私に、身を引けと言うんだ)
けれど、息子を愛する母親というものは、こういうものなのかもしれない。
はからずしも息子を奪う悪女にされてしまった葵は、あきれながら、首を振った。