ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「どうしてそれを、私におっしゃるんですか? 母の立場からおっしゃるのなら、息子である蒼佑さんに直接言えば済むのでは?」
瞬間、りか子は言葉に詰まる。
その表情を見て、葵は、やはりと思った。
蒼佑と話し合わないのは、彼に自分の意見を否定されるのが嫌だからだ。一方的にこうだろうと決めつけて、負の遺産である葵を排除するほうが楽だから、りか子はここにひとりでやってきたのだ。
(いったい、人のことをなんだと思っているんだろう……)
葵は目の前のお茶で唇を濡らし、唇をぎゅっとかみしめる。
だが葵の言いたいことは、それだけではない。
むしろこっちの方が大事だ。
勇気を振り絞って、口を開く。
「――それに……私や蒼佑さんの気持ちは個人のものです。勝手に、罪悪感を抱いているとか、疑似恋愛だとか、決めつけないでください。私も蒼佑さんも、もう子供ではないし、あなたのものではないんですから」
「まぁ……」
葵の反発は、想像していなかったのだろう。りか子があきれたように目を見開いた。