ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

 胸の奥が、ぐうっとつかまれたように痛くなった。

(やっぱり、私の思いに、先なんてなかったんだな……)

 今さら現実を思い知らされて、泣きたくなる。

 じわっと涙が浮かんだが、泣くのは負けを認めたようで嫌だった。

 膝に顔を押し付けたまましばらくじっとして、なんとか気持ちを落ち着けた後、ゆっくりと立ち上がる。
 蒼佑が今日、ここに帰ってくるのかは謎だが――。
 せめて心配させるような振る舞いだけは、したくなかった。



 それからしばらくして、四時過ぎごろ。また玄関のチャイムが鳴った。
 今度は間違いなくナツメで、ニコニコした様子で姿を現すと、キッチンテーブルの上に置いてある材料を見て、「チーズ入りハンバーグだ!」と目を輝かせた。

「やったー、俺の一番の好物!」
「手を洗ってきて。手伝ってくれるでしょ」
「もちろんだよ」

 ナツメは腕まくりして玉ねぎを手に取る。ふたりで刻むが、炒めるのはナツメの役目だ。目に染みる、と騒ぎながら、ドタバタ料理をしていると、なんと蒼佑も帰ってきた。まだ時間は午後の六時だ。

< 224 / 318 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop