ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
三人で囲んだ夕食は、終始楽しかった。あまりにも笑いすぎて、お腹が痛くなったくらいだ。泊っていけばと誘う蒼佑に、ナツメは「明日仕事だから」と首を振り、大内の迎えの車に乗って、帰って行ってしまった。
車に手を振った後、葵がゆっくり歩くのに合わせて、蒼佑も隣を歩く。
「ナツメ君、元気そうでよかった」
「うん……本当に」
葵の一件で、ナツメは仕事を辞めようか考えていたらしいが、あの調子なら、もう大丈夫そうだ。葵はほっと胸を撫でおろす。
「で、葵、明日からの事なんだけど、一緒に温泉に行こう」
「えっ、それ生きてたの?」
唐突に言われて、ビックリした。たしかにそんなことを言われたが、すっかり忘れてしまっていた。
「生きてたし、ちゃんと宿も取ったよ」
蒼佑が口にした温泉宿は、葵も知っている千葉の南房総にある高級旅館だった。
「土日はそこでゆっくりして、月曜日の朝、帰ってこよう。もちろん連泊してもいいし」
そう言いながら、蒼佑はにっこりと微笑みながら、葵の顔を覗き込む。