ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「安心して。不埒(ふらち)なことはしないから。君の療養のために行くわけだし」
「ふ、不埒!?」
蒼佑の言う不埒とはいったいどういうことなのか。なんとなく想像できるが、先回りして言われることで、余計葵の想像を刺激する。
当然、かつてかわしたキスのことを思いだして、顔が真っ赤になってしまった。
「意識した?」
蒼佑がからかうようにささやく。
「い、意識なんてしてませんけどっ……?」
おそらくバレバレに違いないが、葵は必死に誤魔化そうと足早に玄関の戸を開ける。だが次の瞬間、つま先が玄関引き戸レールにひっかかってしまった。
「あぶないっ!」
蒼佑が後ろから葵のウエストに腕を回し、抱き寄せる。
背中から蒼佑の心臓の鼓動が伝わる。
ドキドキ、とびっくりするくらい跳ねている。
「ご……ごめんなさい……」
とっさに謝罪の言葉を口にしていたが、蒼佑はふうっと息を吐いて、両腕を葵のウエストに回し、そっと抱きしめた。
「いや、俺がからかったから。ごめん」