ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
落ち着いた蒼佑らしからぬ喜びようだが、ストレートなそのはしゃぎように、なんだか不思議な気持ちになる。
「――夢みたいだ。ありがとう、葵」
蒼佑は何度もそうささやきながら、それでも思いを押さえられないのか、深呼吸を繰り返しながら、少しだけ、抱き締める腕に力を込める。
すりすりと体を寄せられて、まるで大型犬に懐かれている気分だ。
そして蒼佑からまっすぐにぶつけられる純粋な思いは、りか子によって傷つけられた心を、ぽかぽかと温めてくれる。
そんな傷など、最初からなかったかのように。
(こんなに喜んでくれるなんて……思わなかったな……。私も、嬉しい……かも……)
そう、嬉しかった。
自分と一緒にいられることが嬉しくてたまらないと言う蒼佑に、自分を認めてもらえた気がした。これは恋人がいたことがある人なら、いまさら?と思うような、単純なことなのかもしれない。だが葵にとってそれは大きな前進の一歩だった。
思わず頬が緩む。にやけてしまう。この状況で、顔を見られなくてよかったと、心底思う。
ナツメが見ていたら、きっとからかわれたに違いない。