ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
(おばさまの言っていたお見合いのことは、とりあえず考えるのはよそう……)
悔しいし、考えるだけ身が引き裂かれそうな気持ちになるが、かつて婚約者だったから、わかる。
蒼佑に「私はあなたが好きだから、見合いをしないで」と言ったところで、問題の解決にはならない。
双方の家の事情や、その他の状況。それは葵個人にはどうしようもないことなのだ。
そもそもこのふたりの生活だって、最初から期間限定だ。
できれば最後の日まで、楽しく過ごしていたい。
葵はぎゅっと目をつぶった後、顔を上げ、気持ちを切り替える。
「さて、食器を洗わなくちゃ。手伝ってくれる?」
「もちろん」
蒼佑は肩越しに振り返った葵の目を見て、しっかりとうなずく。
そして一波乱あった三日目の夜は、穏やかに過ぎていくのだった。
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