ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
いい加減、俺に。
翌朝、お昼前に屋敷を出る。都内から車で一時間半の場所に、目指す旅館があるのだ。
蒼佑が運転する車は、優雅なフォルムのシルバーのスポーツカーで、彼がまた安全に運転してくれるおかげか、車にそれほど強くない葵も、ゆったりした気持ちで助手席で過ごすことが出来た。
千葉に入り、しばらくして、葵は車の窓を少し開けて窓の外を眺める。
「このあたりの海岸線、見覚えがある。あ……そういえばナツメが、南房総で二月くらいにロケしたって写真を送ってきてくれたの。黄色い菜の花で、いっぱいだった。あったかいから、一足先に春が来るんだって」
吹き込む風に髪がなびいて、気持ちよかった。
「ああ、確かこの先に、菜の花が続く道があるはずだ。SNS映えするとかいって、有名なんだよ」
SNSには興味はないが、ナツメが以前送ってくれた写真は、本当にきれいだった。
「ふぅん……実際に見たら、もっときれいだろうなぁ……」