ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
そんなことを口走ると、「来年見に来よう」と、さらりと蒼佑が口にする。
「来年?」
「ああ。時間が経つのは早いからな。三十を過ぎて、特にそれを感じてる」
蒼佑はふっと笑って、それから視線の端で、ほんの一瞬、葵をとらえる。
「だから、こうやって葵と一緒にいる時間は、絶対に大事にしたい」
そういう蒼佑の言葉に、嘘は微塵も感じられなかった。
本当にそう思ってくれているのだとわかって、胸がじんわりとあたたかくなる。
そしてそれは葵もまったく同じ気持ちだ。
「――私も」
エンジンの音にかき消されることがわかっていて、葵はそっとつぶやいて目を伏せる。
お昼は軽めにカフェでランチにしようと言うことになり、海岸沿いのカフェへと向かった。土曜の昼間で天気もいい。きっと満席だろうと思っていたら、予約をしていてくれたらしい。
「実はここは、俺が新入社員の頃に営業で通っていたお店でね。俺が営業する立場なのに、とてもよくしていただいたんだ。だから融通がきく。内緒だよ」と笑っていた。