ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
蒼佑がブレーキを踏んで、エンジンを切る。
「えっ、もう?」
蒼佑の言葉に、助手席から窓の外を眺めていた葵は、ハッと我に返った。
「ああ。葵が車に疲れなくてよかった」
「それは……あなたが気を使って運転してくれたから。ありがとう」
「どういたしまして」
蒼佑はにっこりと笑って、先に車を降りると、葵のためにドアを開ける。
実際、東京をゆっくりしたペースで出て、三時間半。あっという間だった。
「うーん!」
葵は車から降りて、両腕を上にあげ、背筋を伸ばす。
目的地の宿《山むら》は、南房総の内海の目の前、海岸線を見渡せる、三部屋しかない高級旅館である。すべてが離れで、それぞれに露天風呂が付いており、全室オーシャンビューになっている。
チェックインを済ませて、女将の挨拶とともに客室へと向かい、葵は部屋の中に足を一歩踏み入れて、「わぁ……」と息を飲んだ。
まず入り口には、障子でしきられている、洋室のベッドルームがあった。中をのぞくと、ふかふかの羽毛布団の、ツインのベッドが置かれている。