ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
畳敷きの廊下を通っていくとリビングルームだ。
部屋は全て畳敷きになっており、和モダンのソファー、テーブルなど、家具が品よく配置されていた。
そして何より、窓の外は一面の海だ。少し高い所から見下ろせて、窓枠が額縁のように作用して、一枚の絵に見える。
「海が目の前!」
「ああ。夕日がすごくきれいなんだ。楽しみだな」
蒼佑はそう言って、葵の隣に立ち、そっと手を繋いでくる。それはとても自然な動作だった。顔を上げると、「だめ?」と蒼佑が首をかしげる。
「――ダメじゃないけど……」
「よかった。じゃあ堂々と繋いでおく」
蒼佑はふふっと笑って、指をしっかりと絡め、テーブルでお茶を淹れてくれる女将を振り返った。
「夕食は……六時半にお願いできますか? いい?」
尋ねられて、葵はこっくりとうなずく。
「かしこまりました。なにかありましたら、お申し出くださいませ」
着物姿の女将は、にこやかに微笑んで、部屋を出て行った。