ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「葵っ!」
急に名前を呼ばれて、葵もまた幻聴かと耳を疑った。
「葵ちゃん?」
ナツメが不思議そうに顔をかしげる。だが葵は声に導かれるがまま、立ち上がり、ラウンジを出ていた。
「声が……」
そして葵は、発見した。
エレベーターの向こうから、長身の男が走ってくる。蒼佑だ。
そして彼のずっと背後には、蒼佑の両親の姿もあった。
(ああ、やはりお見合いをしていたというのは、本当だったんだ……)
そう思いながら、お見合いの場所に押しかけてきてしまった自分を、蒼佑はどう思うだろうと、不安で泣きそうになる。
彼の立場を、余計ややこしいことにしてしまったのではないだろうか。
「ごめんなさい、私っ……」
声が震えて、うまく言葉が出ない。だが葵の前に駆け寄ってきた蒼佑は、そのまま葵を抱きすくめてしまった。
「きゃっ……」
驚いて声を挙げるが、蒼佑は腕の力を緩めない。