ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

「幸せにする!」
「私も……私もっ……」

 葵も無我夢中で、蒼佑の背中に腕を回す。
 もうここがホテルのロビーだとか、そんなことは完全に頭から吹っ飛んでいた。

「もう、なんなんだよ! くそっ、葵ちゃん、おめでとう! みなさん、これ、俺の姉です! やっと幸せに慣れるんです! 俺の自慢の姉なんです!」

 半泣きのナツメの声と、拍手がホテルのロビーに響く。

 しかも拍手はいつの間にかどんどん増えていて、なんだなんだと好奇心で近づいてくる人たちでいっぱいになり、気が付けば大音響になってしまっていた。

 だが蒼佑の腕の中にいる葵は、そんなことにはまったく気が付かなかった。

 ただ、ひたすら、海のように大きくて深い、蒼佑という愛情に包まれていたのだった。

 その後――。
 ナツメがSNSにあがりきったテンションのまま、『俺の姉ちゃんがプロポーズされた件』と写真をアップして、大問題になったのは、また別の話である。




end.

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