ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
番外編・君に思い知らせたい。
「やっっ……と、ふたりきりになれた」
深い深いため息をついて、蒼佑は葵を背後から抱きしめる。
「でも、まだ片付けが終わってないでしょう?」
葵が体に回ってきた腕をやんわりとほどいて、ワンピースの上にエプロンをつけ、さっさと庭に出て行くと、
「ええー……?」
蒼佑は子供のような、不満の声をあげながらも、葵の後ろをついてきた。
葵が蒼佑と再会して約一年が経った翌年の春。この十日ほど、ふたりは春の恒例行事にもなっていた、屋敷での花見の会の準備に追われていた。
それまでは蒼佑の友人・知人のグループが適当に集まって飲んだり食べたりしているだけの会だったのだが、いきなり蒼佑が「葵のお披露目もあるし」と言い出して、少しばかり大掛かりな会になってしまったのである。
お披露目――といっても、それほど堅苦しいものではない。
かつて葵が婚約者だったということは伏せ、結婚を前提に付き合っている女性がいるという、蒼佑の意思表示の一環だった。