ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~

(また――やってしまった)

 蒼佑は薄暗闇の中で、背後から裸の葵を抱きしめたまま、首の後ろに顔をうずめる。

 葵はすうすうと寝息を立てている。
 蒼佑は眠らないまま、その呼吸音を静かに聞いていた。

 ずっと好きだった彼女を手に入れたはずなのに、どうしても心が埋めきれない。
 自分が葵を愛するように、彼女にも自分のことを思ってほしいという気持ちを捨てきれない。
 言葉でうまく説明できない不安から、強く葵を求めてしまう。

 本当は二十四時間毎日そばにいたいのに、葵が『なっちゃんが高校生の間は、一緒に暮らせない』と言われて、死ぬほどショックをうけたのは、去年末の話なのだが、いまだに時々思い出してはひどく落ち込んでいる。

 だが、葵がナツメを大事にするのは当然で、彼はまだ保護者を必要とする高校生なのだ。

(だから、それは当然で、当たり前のことなんだ)

 そう何度も自分に言い聞かせて、蒼佑は葵の前ではできるだけ良識のある大人の男の顔をしている。

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