ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「ん……」
葵が身じろぎする。
寝苦しいのだろうか。そっと腕の力を緩めて、蒼佑は上半身を起こした。
すると楽になったのか、ごそごそしながらこちら側に寝返りを打ち、またすうすうと穏やかな寝息を立てる。
白い頬や肩にかかる葵の髪をそっと指ですくい後ろに流した後、蒼佑はベッドから抜け出して、ぐるりと反対側に回り込む。
そして葵の横に体を滑り込ませて、また葵を背後から抱きしめた。
正面から堂々と抱きしめて眠ればいいのに、夜はどうしても彼女を背後から抱きしめてしまう。
まるで、追いすがるかのように。
(置いていかれるとでも思っているのだろうか)
実際、彼女の前から逃げるように姿を消したのは、自分の方なのに。
自分勝手で、強引で。ちっとも紳士ではない。
瑞樹や閑のようになれない。この獣の本性でいつか大事な葵を傷つけてしまうのではと怖くなるのに、そのくせ葵を手放すことなど微塵も考えない。