ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
唇がかすかに震える。
気を緩めたら、泣きそうだった。
そのまま、両手で顔を覆うと、
「葵」
蒼佑が優しく名前を呼んで、それから近づく気配がした。
「言っただろう。諦めたくないと」
「でも、たまたま再会しただけじゃない……」
そう、たまたまだ。たまたま、昔の許嫁と、再会した。驚いたかもしれないが、なぜここまで避けられて、身を引かないのか。葵には不思議で仕方なかった。
「八年間、仕事でほぼ、アメリカにいた」
「え?」
顔をあげると、蒼佑がじっと、食い入るように葵を見詰めていた。
「本社の役員に選任されることが決まって、それで帰国したのが二週間前で、NATSUの撮影も、部下の仕事を確認するために、行っただけだ……」
グレーの瞳が、キラキラと輝きながら、葵を見据える。
「それで、葵に会えた。これは運命だ。だったら俺は、運命である君を手に入れるだけだ」
「そんな……」
その強い瞳の奥の燃えるような意志に、葵は打ちのめされるしかなかった――。