ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
「だって、噂はあっという間に広まるものよ。いただきます」
渉はクスッと笑って、本日の定食であるアジフライに箸を伸ばす。
「ちなみに私、なんて言われてるんですか?」
「アルバイトでキャバしてて、その客が店に来たって」
「――はぁ」
まさかの噂に、どんな反応をしていいかわからず、あいまいにうなずくと、
「あんた、キャバができるタイプじゃないわよねぇ。愛想も減ったくれもないし。無理無理」
と、さらに失礼な言葉が返ってきた。
だが確かに自分には無理だろうということはわかる。ああいう仕事は、賢くて頭の回る女性がやることだ。昔の許嫁に振り回されて、疲れている自分ではとうてい無理に決まっている。
「でも、違いますよ」
一応、否定だけはしておこうと、葵は首を振った。
「でしょうね。っていうか、そんなの誰も信じてないと思うわ。そこらへんのキャバの客にしては、上等すぎる相手なんでしょう」
渉には至極まじめな顔で、うなずかれてしまった。