ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
今夜、ふたりきり

「今晩は、家まで送らせてほしい。いいね?」

 そう言われて、葵はうなずかざるを得なかった。

 時計を見ていたわけではないが、気が付けば二十三時近くになっている。迷ったけれど今の自分は、かなり酔っていて、足元がかなり危なっかしい。タクシーに乗るのも一苦労しそうだ。
 ここで怪我するのもばからしい。

(そうよ……家に送ってもらうくらい……もう、いまさら……)

 葵はぼんやりしながら顔を上げて、隣で心配そうに自分の顔を覗き込んでくる蒼佑を見あげる。

「私の家……」
「――もう知ってる」
「そう……」

 調べたのかと聞いたところで、蒼佑は「イエス」と答えるだけだろう。まったく悪びれていないし、言い訳すらしないのかと思ったが、そもそも彼の口から発せられる言葉は、一切聞きたくないと言ったのは葵だった。

「行こう。タクシーは呼んでる」

 支払いはいつの間にか蒼佑が済ませていた。

「体を支えるから」

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