ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
小一時間ほどウトウトしていると、見慣れた景色が目に飛び込んでくる。
タクシーは蒼佑の指示通り細い道を入っていき、葵とナツメが暮らすマンションの目の前に停車した。
「足元に気を付けて」
支払いを済ませた蒼佑が葵のバッグを腕に引っ掛け、それから両腕で葵の体を支えるようにしてタクシーから下ろす。
走り去るタクシーのエンジン音を聞きながら、葵は顔を上げた。
「もう大丈夫……」
エレベーターに乗ってしまえば、部屋まで数分だ。
葵はそのまま体を離して歩き出そうとしたのだが、
「それは嘘だ」
蒼佑はクスッと笑って、それから葵の腕をしっかりとつかみ、引き寄せる。
「さっきより足にきてるだろう」
「……それは……」
反論したいが、確かに足ががくがくして、力が入らない。
「お説教するつもりはないけれど、君はすごく弱いんじゃないか? こんなふうにいつも酔ってしまうなら、飲まないほうがいいと思う……君の身の安全のためにも」
「――身の安全?」