ひざまずいて、愛を乞え~御曹司の一途な愛執~
蒼佑がためらいなく六階のボタンを押すのを見て、
「部屋も知ってるの……?」
と、思わず呆れた口調になるが、蒼佑はまた微かに笑うだけだった。
ゆっくりとエレベーターが上昇していく。二、三、四、五、と数字が変化していく。深夜のせいか、いつもは気にならないエレベーターの音がうるさい。
そして自分の心臓の音も、気になった。
(この人が強引に迫ってこないから、私も強く反発してない……)
今さら気が付いたが、拒否というのは、向こうからアクションを起こされて初めてできるもので、むしろ自分が世話を掛けている状況では、拒否のしようもないらしい。
(やだな……こんなの。早く部屋に戻りたい。ひとりになりたい)
ゴウン、ゴウンと揺れる、かすかな振動を感じながら、エレベーターが六階に到着するのを待っていた葵は、さぁ、降りようと扉の前に近づいたのだが。
「――あれ」
六階に着いたはずのエレベーターが開かない。