私の声は君だけのもの
あいつの言う優希ってカリスマモデルであり超人気俳優のシキだったのか?
あいつはとことん面白いやつだな
そんな場合じゃなかったな
「何で歩都がここにいるんだ」
「俺のことを知ってるんすか、光栄っすね」
「自慢でもしにきたのか?」
「自慢も何も、俺は夏音に相手にすらされなかったっすから」
そういいながらそんな自分を情けなく思う
「夏音はずっと一途にあんただけを想っていた」
「そんな…わけ……」
「今回の熱愛報道だってあんたが罪悪感なく自分とお別れできるように利用したいとか
唄うときはあんたを想ってしか上手く唄えないとか
それなのにあんたはこんなとこでなにしてんすか!
今、夏音はあんたとお別れしたショックで声が出なくなっちまった!歌えなくなっちまったって言うのに!」
「!!!ありがとう!歩都くん」
そう言って出ていってしまった
あーあ、行っちまった
多分俺は一生夏音だけを想って唄を歌い続けるだろう
あいつに愛を囁き続けるのだろう
例えこの想いが届くことがなくても
そう思ったら、親父が亡くなってから全く出てこなかった曲が、無意識に涙と一緒に口からこぼれ落ちた