Happy Birthday~大切な人に贈る言葉~
2話 最高の誕生日プレゼント~大切な仲間へ~
カキーン!
グラウンドに響く快音。
そして、空に広がる夏空。
今年も熱い夏がやってくる。
夏が来るということ‥それは、俺にとって高校最後の夏がやって来るということだ。
ここは、成蘭(せいらん)高校野球部のグラウンド。
公立の学校で、部員は30人。毎年2、3回戦で負けてしまういわゆる弱小校だ。
だけど、今年の夏は違う。
なんといってもうちのチームには頼れる主将がいるからだ。
「おい!!!それぐらいのノックとれなくてどうするんだよ!!!気合い入ってないんじゃないのか!!」
そう、今日もグラウンドに響く彼のどなり声。
監督がいないときは監督にかわってノックをする。もちろん監督の許可を得てだ。
俺的には彼のノックは監督にも劣らないと思う。
ノックだけじゃない、彼はピッチングも上手い。
「次、絢人(あやと)いくぞ!」
「おお!来い!」
俺の名前があいつに呼ばれる。
一成(いっせい)は本当にすごい奴だって俺は思うよ。
俺、関口絢人と主将の野上一成は中学からのチームメイトだ。
プライベートでも一緒に遊びに行く仲だ。
でも‥最近はなかなか話せない。
何しろ、一成がピリピリしてるから。主将という責任を感じてるからかもしれない。
「本当、キャプテンだからて偉そうだよなー。」
部活終わり、部室で制服に着替えてるとチームメイトが言った。
「監督いないから、しきってんじゃねえよて感じ。」
そう誰かが言うと、みんなが少し慌てる。
「おい、やめとけて。一成に聞こえたらどうするんだよ。」
「大丈夫だって。この時間、あいつまだグラウンド整備してるだろうからさ。ったく、俺らがやった整備に文句あるのかね。」
そう。いつも練習終わりに一成はグラウンドを丁寧に整備する。
それは中学の時から変わらない。
変わったのは一成だ。
野球をすることが俺にはつらそうに見える。中学の時は楽しそうにやってたのに‥。
俺は仲間が言う一成の悪口を聞きたくなくて、ささっと着替えて部室を後にした。