私の夏の恋
私の夏の恋
青く澄み渡った、夏空。私、新井恵美は、教室の窓からいつも野球部の練習姿を見ていた。
ーーーーーーキーンーーーーーー！
甲高い金属音が、グラウンドから私の耳に届く。
「恵美。また、野球部見てんの？」
「………」
振り向くと、同じ中学二年生の海野渚が私の目に映った。
夏らしいショートカットの髪型に、私よりも少し背が高い。陽に焼けた健康的な肌に、つり目。
「まーね。野球ってカッコイイし、見てても飽きないよ。」
ーーーーーー本当は、嘘。野球なんかルールも知らないし、興味すらない。私がいつも見てるのは、野球部のキャプテンの吉田拓也先輩だけだ。
彼のことを思うだけで、私の顔が赤くなる。
「ふーん。そんなに好きなら、もっと近くで見なきゃ損だよ。」
「えっ！」
そう言って渚は、私の白い手をぎゅっと握って無理やりグラウンドの方に引っ張った。
「ちょっと、渚………」
野球部が練習しているグラウンドに近づくに連れ、私の心臓の鼓動が高鳴る。


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