私の夏の恋
「じゃあな、恵。」
「先輩、本当に東京に行くんですね……」
「ああ、もちろん。野球、好きだからな。」
夏の大会が終わって、春を迎えていた。残念ながら先輩の中学野球最後の夏の大会は、ベスト4という惜しい結果で幕を閉じた。
学校の卒業式も終わって、先輩は京都駅のホームから東京行きの新幹線に乗ろうとしていた。
ホームにはスーツを着たサラリーマンや、OLたちが東京行きの新幹線に乗り込んでいく。
ーーーーーーまだ、乗らないで。
私は心の中でそう思ったが、
『間もなく、東京行きの新幹線が発車します。』
と、ホームにアナウンスが無情にも流れた。
「悪い、もう行くわ。じゃあな、恵。」
「あ、先輩。実は私、野球よりも、先輩の………」
そう言いかけたところで、ピーというけたたましい音とともに、新幹線の扉が閉まった。
「………好きです。私、野球よりも、先輩の方が好きです。」
すでに発車した新幹線には、私の告白は彼にはもちろん聞こえていない。
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