gift
お酒も料理もある程度行き渡り、忙しくしたくても暇になってしまう。
「誰かボトルでも割ってくれないかな」
何かしていないと、どんどん気持ちが落ち込みそうだった。
そんな気分で飲むワインはいつも以上に渋くて、自然と眉間の皺が深くなった。
注ぎ足そうとする夏歩ちゃんを断って、ビールを注文する。
「あ、このワイン渋いですね。岩本さんと課長に飲ませちゃいましょうか」
夏歩ちゃんが課長や岩本さんにお酌する向こうには、普段より笑顔が多めの湊くんの姿が見える。
先輩たちにお酌をしながら談笑する姿は、一年前とは見違えるほどにごく普通の会社員だ。
「今井さん、寂しい?」
ワイングラスを片手に首をかしげる課長は、そのままポスターにでもできそうなほどまばゆいお姿だった。
裏面印刷しなければ。
「そう見えます?」
「痛々しいほどにね」
渋いはずのワインは、流れるように課長の喉を通っていった。
「なんで湊くんなんですか? 美里さんの代わりなら、岩本さんが異動すればいいのに」
「本人の希望だからね」
課長の言葉に、息が止まるほどショックを受けた。
振られはしたものの、湊くんがいる生活はやっぱりとても楽しくて、私はずっとそばにいたいと思っていたから。
課長のグラスが空になっていることにも気づけず、課長は手酌で残りのワインを全部注いだ。
「課長、それって個人情報じゃ……」
「相手が今井さんなら、湊さんは許すでしょ」
ジロッとひと睨みで、何でも許してくれた湊くんの姿が、ありありと思い出される。
きっと今回だって、フンッと目を逸らすくらいで済ませてくれると思う。
だけど、
「もしかして、湊くんは私のことがいやだったんでしょうか? イジメが辛いって感じてたんでしょうか?」
「ははは! それはないよ。湊さん、いやならハッキリそう言う人でしょ」
入社したての頃、朝礼のとき持ち回りでやっている一分スピーチを当てられて、「いやです」と言い切った姿を思い出した。
課長の思い込みだとしても、否定してもらえてホッとした。
ビールはいつの間にかなくなっていて、手近にあった白ワインを手にすると、ありがたくも課長が注いでくれた。
ジョッキに半分ほど注がれた白ワインを、ビールと同じ要領で飲む。
「誰かボトルでも割ってくれないかな」
何かしていないと、どんどん気持ちが落ち込みそうだった。
そんな気分で飲むワインはいつも以上に渋くて、自然と眉間の皺が深くなった。
注ぎ足そうとする夏歩ちゃんを断って、ビールを注文する。
「あ、このワイン渋いですね。岩本さんと課長に飲ませちゃいましょうか」
夏歩ちゃんが課長や岩本さんにお酌する向こうには、普段より笑顔が多めの湊くんの姿が見える。
先輩たちにお酌をしながら談笑する姿は、一年前とは見違えるほどにごく普通の会社員だ。
「今井さん、寂しい?」
ワイングラスを片手に首をかしげる課長は、そのままポスターにでもできそうなほどまばゆいお姿だった。
裏面印刷しなければ。
「そう見えます?」
「痛々しいほどにね」
渋いはずのワインは、流れるように課長の喉を通っていった。
「なんで湊くんなんですか? 美里さんの代わりなら、岩本さんが異動すればいいのに」
「本人の希望だからね」
課長の言葉に、息が止まるほどショックを受けた。
振られはしたものの、湊くんがいる生活はやっぱりとても楽しくて、私はずっとそばにいたいと思っていたから。
課長のグラスが空になっていることにも気づけず、課長は手酌で残りのワインを全部注いだ。
「課長、それって個人情報じゃ……」
「相手が今井さんなら、湊さんは許すでしょ」
ジロッとひと睨みで、何でも許してくれた湊くんの姿が、ありありと思い出される。
きっと今回だって、フンッと目を逸らすくらいで済ませてくれると思う。
だけど、
「もしかして、湊くんは私のことがいやだったんでしょうか? イジメが辛いって感じてたんでしょうか?」
「ははは! それはないよ。湊さん、いやならハッキリそう言う人でしょ」
入社したての頃、朝礼のとき持ち回りでやっている一分スピーチを当てられて、「いやです」と言い切った姿を思い出した。
課長の思い込みだとしても、否定してもらえてホッとした。
ビールはいつの間にかなくなっていて、手近にあった白ワインを手にすると、ありがたくも課長が注いでくれた。
ジョッキに半分ほど注がれた白ワインを、ビールと同じ要領で飲む。