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「デブ、ハゲ、変人。なんかの見本市みたいですね」
「ハゲのハイスペックイケメンと、見た目は普通の変人だったら、あやめちゃんはどっちを選ぶ?」
「そこにデブの善人は入らないんですか?」
「二択で」
「うーーーん、課長と湊くんか……。美里さんは?」
鉄板にキャベツ(岩本さん用)を放り込んで生レモンサワーを堪能していると、美里さんは間髪入れずに断言した。
「課長」
「あ、やっぱり! 正面だけ見たら文句ないですもんね」
「そうじゃないの」
美里さんは至極真面目な顔で、岩本さんの肉をかっさらった。
「湊くんが今後ハゲないとは言えないでしょ?」
「あ、本当だ」
今はつやつやサラサラで天使の輪まであるけど、将来あれが全部抜けて、ツルツルピカピカの天使の輪に変わる危険性はある。
「だけど太りそうには見えないよね」
「美里さん、やっぱりデブ嫌いですか?」
返事をすることなく、華麗に肉をひっくり返す岩本さんのプクプクした手をじっと見ている。
「あやめちゃんと根津さん。見た目にはいいカップルよね。見た目には」
含んだ言い方はともかく、どうやら褒められたらしい。
焼けたばかりの岩本さんの肉を二枚、美里さんのお皿に入れる。
「えへへ~、ありがとうございます」
美里さんは何かもやもやを吐き出すように、岩本さんのお皿にキャベツ(生焼け)を大量投入した。
「いいんだけどね、根津さん。文句ないんだけどね。なんだかなぁ」
美里さんのつぶやきは気になったものの、
「ああ! 岩本さん!」
「ついに、ついにハラミを手に入れた……うんうん、蜜の味!」
岩本さんとの攻防に負けたことで、聞きそびれてしまった。