【短】1%の可能性に想いを込めて
1%の可能性に想いを込めて
「うん、…うん。そう、よかったね」
放課後の教室。
忘れ物を取りに来た私は、夕日にあたりながら誰かと電話をしている彼に会った。
妙に大人びている彼───夏輝(ナツキ)くんは、電話する声とは裏腹にとても切ない表情をしているように見える。
あぁ、電話の相手は…。
その表情で、電話の相手が誰なのかは簡単に予想がついた。
去年の今頃。
偶然知ってしまった、夏輝くんの秘密。
───ガラッ
「夏輝くん」
「…え、菅田(カンダ)?」
電話が終わったタイミングで、私は教室の扉を開けた。
名前を呼ぶと驚いたように振り返る彼。
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