【短】1%の可能性に想いを込めて
その時は「そっか」と納得したけど、立ち去っていった夏輝くんが落としていった1枚の写真を見て、涙が溢れてしまった。
それは、少し幼い夏輝くんが、女の子とじゃれあって遊んでいる写真。
学校では大人びている夏輝くんが、そんな表情を見せる女の子の存在にドキッとした。
…あぁ、この人が夏輝くんの好きな人だ。
そう分かるのに時間はかからない。
少し萎れたそれは、ずっと夏輝くんが持っていた証拠。
…返さなきゃ。
それを見て私は、本能的に夏輝くんの大切な人の写真を返さなきゃいけないと思った。
「夏輝く──…」
追いかけて、夏輝くんに声をかけようとした時。
思わず、足を止めた。
「あははッ。まじ?…うん、…うん。うるさいなー。子供扱いすんなっての」
そこには、凄く楽しそうに電話で誰かと話す夏輝くんの姿があったから。