愛されたかった、好きだった。





「いや、ほんとに遠慮してないんで」



「何言ってんの、照れてるだけだろ?

俺は木下 秋斗(きのした あきと)、秋斗って呼んで」



「照れてないです、とりあえず木下くん手を離してくれませんか?」



さっきから、木下秋斗と名乗る男は私の手を握りニコニコと笑っている。

何がそんなに楽しいのだろうか。




「んー、名前教えてくれたら離すよ」



「三木 紘(みき ひろ)です」



「じゃあ紘、俺と付き合うよな?」



「付き合わないですね」



「えー」と頬を膨らませ「なんでなんでー」と手は離れたものの距離が近い。無駄に近い。




「俺怪しくないよ?」



急に付き合ってだの言って手を掴んできた男のどこが怪しくないと思うのだろう。



「十分怪しいですよ」



「やだなー、照れ隠し?」



「頭おかしいんじゃないですか」



何がおかしいのか「紘は面白いな」と爆笑していた。


この人と話してると気力を消耗するな…




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