愛されたかった、好きだった。
「はぁ〜、ダルいなぁ。
僕男だよ?なんなら確かめてくれてもいいし」
ブレザーのボタンにへと手をかける彼を止める。
「いや、何考えてんの!?
別にいらないから」
なんなのこいつという風に奇妙な目で見られなんか一気に疲れた。
「ね〜、早く行こうよ。
濡れ子(ぬれこ)サンバッイバーイ」
「綾乃、濡れ子さんってなに」
彼みたいな人でもその名前を認識していたのかと感心してしまう。
いや、まず何故名前すら知らない初対面の人がその名前を知っているのだろうか。
まぁ彼女たちなら言いふらしていそうだな。
自分をよく見せるために人を蹴落として目立って、嫌われないように慕って顔色を伺う。
本当に馬鹿みたいだ、女の世界というものは。
「いっつも水掛けられてるからだよね〜、濡れ子さん?」
この人は人の気持ちというものを考えているのだろうか、考えていなかったらこんなこと笑顔て言うわけもないか。
「紘水掛けられてるってどういうことだ?」
「女たちに掛けられてるんだよね〜
かっわいそー」
「綾乃には聞いてない」
「はいは〜い」
怖いなー秋斗は、と全く怖がってるようには見えない笑顔でくすくすと笑っている。